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1トン10円の水を手に入れる

【今回の要点】
・知的生命体に出会えないのは水不足のせい?
・1トン10円で水を作れば戦争を避けられる
・腎臓にヒントがある

 

【知的生命体には生存可能時間がある?】

この宇宙に、私たち以外の知的生命体はいるのでしょうか?

カリフォルニア大学の研究チームによると、私たちの天の川銀河系だけで100億個の地球型惑星が存在し、さらにこの宇宙には1,700億個の銀河系が存在します。

ここまでの数値を見せられると、いない可能性はないのではないかと思ってしまいます。

そうすると次に疑問に感じるのは、なぜお互いに接触できないのか、という点です。主に距離と時間の二つの問題だと思いますが、距離も結局時間に集約されそうです。私たちがずっと存在し続け、相手もずっと存在し続けるのであれば、いつかは出会うはずだからです。出会えなくても、コンタクトは取れるはずです。

しかし現実には出会えていませんし、コンタクトさえありません。

ということは、知的生命体の「時間」には限りがあるのではないか?という少し怖い前提が生じます。それをまるで証明するかのようなグラフがあります。それが下の人口爆発のグラフです。横軸が西暦、縦軸が人口です。

数万年の間ゆるやかに増加していた人類は、西暦2000年に近づくと急激な増え方をして、現在73億人を突破しています。

 

 

【人口爆発と水不足と紛争、そして戦争】

実はこの世界は仮想現実で、この状況はわざと作り出されているのではないか…。そんなSF小説を信じてしまいそうな絶妙な位置に私たちは生きています。

4人だった家族が一か月で一気に70人になったという表現が近いのかもしれません。生活していかなければなりませんが、いろいろなものが急に不足する。不足を自覚するよりも速く、家中あちこちで騒がしくなります。

これを世界情勢に当てはめれば、最も深刻な問題は水不足で、騒がしさが紛争にあたります。紛争はやがて戦争の引き金になります。

そして日本は「大量の水輸入国」であり、真っ先に巻き込まれます。

国連が水戦争を警告している理由です。ー「水の危機

知的生命体の「生存可能時間」が真実味を帯びてきます。持続可能性という学術用語もありますが、私は「生存可能時間」という直接的な表現の方がふさわしいと思います。

しかし問題のほとんどの原因は水です。水さえ確保できれば、のどの渇きを癒し、食料を育てることができます。

 

 

【1トン10円以下で水を作る技術】

私たちが使用している生活用水は水道水、工業用水、農業用水に分けられます。大雑把にそれらのコストは、

水道水:1トン100円
工業用水:1トン30円
農業用水:1トン3円

ですから、1トン10円以下で作ることができれば、70人の家族でもなんとかなりそうです。

ちなみにミネラルウォーターは1Lだいたい100円ですから、1トン10万円で買っていることになります。

現在のところ、蒸留法(熱で発生させた水蒸気を水に戻す方法)とRO膜法(逆浸透膜というフィルターで塩分を取り除く方法)が有力視されていますが、これら二つの選択肢だけでは熱源や圧力源などコスト上で不安な面があり(およそ1トン100円)、他にも様々な低コスト技術が世界中の研究チームによって模索されています。

たとえば、超音波法(加湿器のように超音波で霧化して水を得る)、結露法(空気中の水蒸気を冷却して結露水にして得る)などがあります。

私たちが目指しているのは、腎臓を模倣したPD膜法です。

腎臓では一日200Lの水を浄化し続けていますが、その動力源(圧力源)は人体で支えられる程度に小さなものです。

 

 

腎臓で大まかにろ過された200Lの「原尿」は、膀胱へつながる「細尿管」を通りますが、その間に99%(199L)の水分が体内に取り戻されます。それを実現しているのが細胞膜に埋め込まれている「アクアポリン」という水だけを通すタンパク質です。

私たちはこれと同じようなメカニズムを目指し、セルロース製の超親水性膜に数ナノメートルの小さな孔を安定的に形成させる「PD膜」の工業的な製法を確立しました。さらにその膜に先ほどの水チャンネルのような水を選択的に通すような表面改質ができないか模索しています。しかし未だテーブル実験の段階です。

 

 

PD膜分離を淡水化に適用するための高度化はまだ道半ばです。発明者である真鍋征一博士による開発を経て、FILTOMによって化粧品に適用され、少しずつですが実用化に近づいていますが、ゴールまでには高度化だけではなく、スケールアップといったいくつものステップを想定しています。たとえば池湖沼からの胞子やバクテリアの除去や、養殖場からのウイルスの除去などです。

そうした高度化とスケールアップに可能性が見いだせれば、セルロースという大規模生産に適した素材と潮汐流程度の動力源の組み合わせは、安価な淡水化の手段になるのではないかと期待しています。

知的生命体に生存可能時間があるのであれば、それを打ち砕く最初の生命体になってみたい。そのように願いながら世界中の研究者と足並みをそろえて作業を続けています。

FILTOM

2020.5.5

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