「微生物育成リップ」で育てた「プロピオン酸菌」に育てられる「私たち」
文・FILTOM × イラスト・コヤナギユウ
■ 微生物育成リップが育てる微生物たち
私達の体ではたくさんの菌が場所ごとの環境に合わせて住み分けをしています。
では唇にはどんな菌が住んでいるのでしょうか?
唇は顔と口の中間に位置する特殊な場所。
顔のお肌に住む「皮膚常在菌」と、お口の中に住む「口腔細菌」が混在して生活しています。
この中で「微生物育成リップ」が育成するのは「Propionibacterium」が付いたプロピオン酸菌たち。
皮膚常在菌の中でもっとも一般的な菌の一つです。
プロピオン酸菌たちは皮脂を分解してプロピオン酸とグリセリンを作り、唇をみずみずしい状態に維持管理してくれています。
■ プロピオン酸菌が育てる私たち
人体を構成する細胞は60兆個。しかし人体に住む微生物は実に「600兆個」。
この数を比べると、どちらが家主か分からなくなります。
しかし彼ら微生物たちにとって私たちの体は家というよりも「母なる大地」。私たちにとっての地球とおなじくらいかけがえのないもの、ということは想像できます。
だとすれば、私たちがみずみずしい地球にあこがれるのと同じくらいに、プロピオン酸菌たちも、みずみずしい大地、みずみずしい唇をほしがっているはずです。
私たちとプロピオン酸菌が共同で育てているみずみずしい大地。それがスキンケアの目指す「美しい肌」なのだと言えそうです。
■ アクネ菌は悪くない説
「ニキビの原因」とされているアクネ菌も、じつはそんなプロピオン酸菌の一つ。(※1)
まるで悪い菌のようなイメージもあるアクネ菌ですが、他のプロピオン酸菌と同じように、みずみずしい肌を育ててくれています。
「ニキビの原因」も、そもそもは私たち自身の体調やストレスで過剰に分泌された皮脂が毛穴を塞いでしまうから。その結果、毛穴に閉じ込められたアクネ菌は過剰に増殖し、「にきび」として表面化します。
でもこれって、もしかしたら、「増殖したからニキビができた」のではなく、「環境を元に戻すために数を増やした」のではないでしょうか?
アクネ菌に聞かなければ分かりませんが。
ある報告によれば、ニキビが成長して破裂する現象は、アクネ菌の産生する酵素によるものであることがわかっています。(※2)
私たちと一緒に私たちを育ててくれているプロピオン酸菌たちをもっと身近に感じることができるリップ。
それが微生物育成リップです。
文・FILTOM (oike)
イラスト・コヤナギユウ
※1:アクネ菌(Propionibacterium acnes)は2016年に新たなキューティバクテリウム属に移され「Cutibacterium acnes」という学名に変更となりました。(NBRC News, 48, Bio Technology, National Institute of Technology and Evaluation)
※2:Noble, W. C. (February 1984). “Skin microbiology: coming of age”. Journal of Medical Microbiology. 17 (1): 1–12.
コメントを残す